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全ての命は、大地の想いで育まれる。

あの海でさえ、その底には大地を抱いているものを。





その島には、巨大な一本の樹があった。

精霊が宿るというその巨大な樹は『聖譚樹』と呼ばれ、島を護っているという。

精霊の加護を得るために、100年に一度聖譚樹の前で行われる儀式

『ミゼレーレの儀』

精霊神殿の奥深くで育てられた「レイソン」の称号を持つ巫子は、

十六の歳になると、その儀式を行う為にラクリモーサ樹海を越え、

聖譚樹の元へ旅立つならわしであった。

当代のレイソンの巫子、キリエもまた、十六の歳を目前にしていた。

しかし、神殿と諸侯の権力の対立から、

儀式の妨害を目論んだ諸侯軍にキリエは拉致されてしまう。



キリエを取り戻そうとする神殿武官の少年、カノン。

レイソンの巫子の誘拐を目論む盗賊の一員、クレド。

偽りと痛みをまなざしに宿し暗躍する青年、レイキエム。



様々な者達の思惑が入り乱れる中、

キリエは唯一人のレイソンの巫子として、

己が義務を果たすために聖譚樹を目指す。

大切なものを護る為に。

精霊の加護を失っては、人は生きていけないのだと信じて───……